(以下、記事より)
それぞれの分野で活動していた共同代表3人は、東日本大震災後の東北復興のコーディネートなどにも携わっていた藤岡喜美子さん(愛知県)の声掛けで、本心発生から4日後の4月20日、緊急時に見落とされがちな子どもと女性への支援を行う「熊本こども・女性支援ネット(KCW)」を立ち上げました。
東北、阪神淡路の震災後の性犯罪やDV被害の実態を踏まえ、行政に呼び掛けるなど、女性や子どもへの配慮の必要性を、SNSなどを使い発信。県内外をはじめ、海外の支援者や企業からの、特に女性や子どもに必要な支援物資の受け取り、分配窓口としての機能も果たしました。
地震発生後から、「自身も不安で眠れない日が続いた」という清水菜保子さん。心のケアに、ハグ(抱き締める)することが有効であるという心理カウンセラーの話を思い出し、子どもをハグしてみると、子どもも自分も不思議と心が落ち着きました。この経験から、ハグをしながらの呼吸法、体操などで、緊張をほぐしていく「くまもとハグプロジェクト」を開始しました。
また本震後、海外の専門家をアドバイザーに迎え、外遊びの機会が少なくなった子どもたちが、自然の中で思いっきり遊ぶことで、大きな環境の変化を乗り越えられる力を養う「森の教室プロジェクト」を立ち上げました。地震の被害が大きかった上益城郡益城町・御船町や熊本市東区など、9カ所で実施しました。
5月に入ると、指定避難所でないものの、施設避難所として活躍した保育所をメンバーが巡回訪問しました。「早くから行政の支援が入る小・中学校と違い、避難所の役割を担いつつ、通常の保育を再開した現場では、保育士が疲弊してしまっていました。熊本地震による子どもたちの心身のダメージは大きく、日常の保育ができる状態ではありませんでした」
地震発生後の保育の現場を支える緊急支援として、9月から県内外の社会的保育者を被災地の保育所に派遣する「社会的保育実践者(*)派遣プロジェクト」を開始。専門家のアドバイスの下、県内7カ所の保育園へ18人の保育者を派遣しました。「子どもたちや保育士が安心して支援を受けられるような仕組みづくりを目指しています」(園田敬子さん)
また、8月から、県内で活動しているNPOや任意団体など1200団体に、地震後の活動調査アンケートも実施。ヒアリングを続けながら、今後は、上がってきた声を分析、研究し、国内外の企業や団体とつなぐネットワークづくりにも力を注いでいくそう。「この経験を糧に、自ら主体的に行動できるリーダーを育成していくことが、熊本の復興を後押しすると思います」(清水さん、園田さん)
*社会的保育実践者とは…
① 保育の果たす社会的役割が分かっている【理念・意志】
② 身体一つで保育ができる【知識・技術】
③ すでにある価値観(生活や保育)を批判しない【包容力・ユーモア・デザイン力】
④ 親子および子どもと保育者の関係への支援ができる【関係性への専門的理解】